1位作品の画(え)には圧倒されました。本来映画には言葉はいらない、そんなことを思い出しました。2位はハネケ監督の最高作として。3位、4位の順位は変えてもいい。そして5位以下は大いに悩みましたが、『舟を編む』はワールドワイドな傑作だと確信します。それは日本の文化に根深い辞書創りをテーマにしていながらライトなコメディに仕上がっていたことに驚き桃の木です。10位を『コズモポリス』にしたことで、『地獄でなぜ悪い』、『凶悪』、『共喰い』など多くの日本映画が選外となってしまいました。
10位 コズモポリス
(フランス=カナダ=ポルトガル=イタリア合作映画/監督:デヴッド・クローネンバーグ)
奇しくも昨年はデヴィッドの息子ブランドンの『アンチヴァイラル』が公開されました。バッドテイストな新感覚映画でしたが、それは親父譲りでしょう。親父作品=マンハッタンをひた走るリムジンを主要舞台とした金融ホラー『コズモポリス』に身の毛がよだちました。
9位 トゥ・ザ・ワンダー
(アメリカ映画/監督:テレンス・マリック)
ある席で老夫婦とこの映画の話しをした時、フランスのモン・サン・ミッシェルの美しい自然の話を聞きました。カットバックなどの現代的映画手法を捨ててただただ美しい写真をみせるマリック。退屈だという声も聞きますが私にはリゾートでのんびり風景を目で追う……そんな映画です。
8位 王になった男
(韓国映画/チェ・チェンミン監督)
韓ドラ・ファンでもある私としては、映画化すると短くなりすぎない?との心配は杞憂でした。国王の替え玉という話しは珍しくもありませんが、替え玉の方が王らしい人格者に変貌していくあたりは気分いいですね。バイオレンス映画ばかりが韓国のお家芸ではないと見せ付けられた逸品。
7位 偽りなき者
(デンマーク映画/トマス・ヴィンターベア監督)
幼女の小さな嘘が周囲の大人たちの誤解を生みます。平穏に見える日々の暮らしに潜んでいる目を覆いたくなるほど醜い疑心を顕にし、信じて疑わない絆や友情の脆さを私たちに気付かせてくれる。「それでもボクはやってない」デンマーク版。
6位 舟を編む
(日本映画/石井裕也監督)
世界で最も難解な言語と言われる日本語。本作は日本の辞書創りに生涯をかけた者たちの物語だ と言うとメチャ真面目な映画のようですが、そうなのです、主人公の姓がマジメなのです。このあたりから洒落っ気があって、大爆笑映画といっていい。これほどマトモでこれほど笑った日本映画も近年稀です。
5位 フライト
(アメリカ映画/ロバート・ゼメキス監督)
1970年代に流行った「エアポート」シリーズのようなパニック映画ばりに映画は幕をあけます。背面飛行後の不時着で多くの人命が救われたのです。パイロットは一夜で英雄。しかし彼は失踪。はてさてその謎は……。彼はアルコール依存症だったのです。他人事ではない物語に私は言葉を失いました。但し、しっかり娯楽映画になっているところがハリウッド映画の凄さなのかしらね。
4位 ジャンゴ繋がれざる者
(アメリカ映画/クエンティン・タランティーノ監督)
開放奴隷ジャンゴとドイツの賞金稼ぎの男の旅を描いたマカロニウェスタンタッチのトンでもない西部劇。過去を消化した現代だからこそ創ることができるし、それを笑いにもっていく演出はお口あんぐり。較べては失礼ですが名作『リンカーン』が教科書のように退屈に感じてしまったのはこれを見たからかもわかりません。
3位 華麗なるギャツビー
(アメリカ映画/バズ・ラーマン監督)
レッドフォード主演の同作より断然面白い! 『ロミオ+ジュリエット』、『ムーラン・ルージュ』のラーマン監督は、やっぱりラーマンでした。前半の時代考証を半ば無視したランチキ騒ぎに血脇肉踊っていたら、お話は次第にラブ・サスペンスに突入。賛否あれども私に最高のご馳走でした。レオ様最高!
2位 愛、アムール
(オーストラリア=フランス=ドイツ合作映画/ミヒャエル・ハネケ監督)
日本でも社会問題化している老老介護を俯瞰した物語。たまに帰宅して母の変化に取り乱す娘と対照的に、日々寄り添う夫は衰えゆく妻を冷静に受け止めているかに見えるが、実のところ彼の心を蝕んでいるのです。しかし、その苦しみこそ、長い人生を共に歩み育んできた愛の、最期の姿です。ハネケ監督の最高傑作は是非観て欲しいと思います。
1位 ゼロ・グラビティ
(アメリカ映画/アルフォンソ・キュアロン監督)
2013年公開映画のブッチギリの1番でした。脚本もいいのですが、無重力のあの映像です。映画とは映像が第一。この映画ならサイレントであっても「いったい今何が起こっているのか?」がわかると思います。2月発表のアカデミー賞作品賞はこれで決まりです。違ったら「失礼しまいた」といいます(笑)。 まだの方、是非劇場へ。